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函館家庭裁判所 昭和42年(家)658号 命令

申立人 清水ユキ(仮名)

事件本人 清水正夫(仮名)

主文

本件準禁治産宣告申立についての審判確定に至るまでの事件本人清水正夫の財産の管理のため、同人所有にかかる

別紙目録記載の不動産の管理人として

本籍ならびに住所 ○○市○○町○○番地

氏名および生年月日 浦島秀雄 明治三四年一一月二五日

を選任する。

(家事審判官 近藤道夫)

参照 事件の概要等

一 申立の趣旨

清水正夫を準禁治産者とする。

○○市○○○町○○○番地清水マサを保佐人とする。

との審判を求める。

二 事件の実情

申立人は事件本人清水正夫の妹であるが、事件本人は幼少の頃より知能がおくれておつたところ、本年一二月初旬ころより、精神薄弱状態および心因反応、接技分裂病等に罹り、意思能力欠如の状態となつた。そのため現在○○病院に入院、目下療養中であるが、益々病状悪化し、心神喪失の状況ではないが、心神耗弱し到底自分で法律行為をなし得ることができないので準禁治産者として保佐人をつけなければ、本人の利益を害する虞れがあるから、そのためこの申立をする次第である。なお、同人の保佐人は前記清水マサが適任と信ずる。

三 審判前の臨時に必要な処分の審判に至つた経過

中間的審理の結果によれば、事件本人は、保佐人候補者の二男であり、右母が父の死亡後間もないころから事件本人を婚家に置いたまま実家に戻つたため、以来祖母(亡父の母)に養育され成人して現在に至つたが、その間亡父から相続した財産等の管理行為は右祖母と叔父(父の次弟)によつてなされ、しかも右叔父はその一部を自己の所有に移転し、あるいは耕作をも独占する等事件本人に全く関与させることがないうえ、周囲の助言中傷もあつて、右叔父のために自己の財産を侵奪されるものと信ずるに至り、申立書記載の病名で入院に至つた過程でもその趣旨を放言する等の行動に出で発病の一要因をなしたこと、他方母および申立人と祖母および叔父との間には母の婚家を去つた事情、事件本人の養育等を原因として強い違和感が続いていたうえ、事件本人の入院を契機に同人の所有不動産の権利証が申立人により保管されるに及んで、その財産管理をめぐつてますます相互の不信感が強まり互いに抗争しつつあることが認められ、結局両者の一方にその管理を委すことによつて、両者の抗争の度を増すとともに本件の終局審判までの間に事件本人の所有財産の散逸の虞れも考えられるので、右抗争の渦中にない親等の遠い親族中適任者をして管理させるのを適当と認めた。

四 財産管理人に対する管理上の具体的指示等

申立人から裁判所に提出された不動産権利書(財産管理処分のため財産管理人の保管に托すことの承認を内容とする任意提出書により提出)を財産管理人に保管させ(管理処分についての変更、取消その他特段の指示あるまで保管する旨の保管書を提出)たうえ一般善管注意義務にもとづき管理すべき旨を指示した。

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